岡山大学
北里大学
電気通信大学
◆発表のポイント
- 約70年前、P. W. Andersonは磁鉄鉱(Fe3O4)の基底状態を考える中で、四面体ごとにFe2+とFe3+が2個ずつ並ぶ規則を提案しました。しかし、この理想的な秩序パターンがそのまま結晶全体に並んだ例は、長く見つかっていませんでした。
- 本研究では、CuIr2S4の高圧構造で、この2対2の規則に対応する並びが、電荷そのものではなく短いIr–Ir結合の配置(ボンド秩序)として現れることを発見しました。
- CuIr2S4では、さらに高い圧力で金属化し、超伝導転移温度が18.2 Kに達することが報告されています。これはスピネル化合物として最高値です。今回決定した構造は、高圧下で生じる超伝導の母体を理解するための基盤になります。
- LiV2O4をはじめ、高圧下で秩序化して絶縁体となるパイロクロア格子物質は数多くあります。X線回折と第一原理計算を行き来する今回の手順は、こうした物質群の構造解析に広く利用できる汎用的な方法です。
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の片山尚幸教授、名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程の江見方敏大学院生(研究指導委託学生として岡山大学に受入れ)、北里大学理学部物理学科の杉本高大講師、電気通信大学大学院情報理工学研究科の松林和幸教授らの共同研究グループは、スピネル化合物CuIr2S4を高圧下で調べ、約70年前にP. W. Andersonが磁鉄鉱(Fe3O4)の基底状態について提案した「四面体ごとにFe2+とFe3+が2個ずつ並ぶ」規則に対応する秩序を、短いIr–Ir結合の周期配列(ボンド秩序)として発見しました。放射光X線回折で構造の骨格を絞り、第一原理計算で原子配列を整え、再び回折データで検証することにより、全原子の位置を決定しました。その結果、各四面体で「短い結合に関わる原子」と「関わらない原子」が2対2に並ぶことが分かりました。今回決定した構造は、さらに高い圧力で現れる超伝導の母体を理解する基盤になります。LiV2O4(リチウムバナジウム酸化物)をはじめ、パイロクロア格子をもつ物質には、高圧下で秩序化し絶縁体となるものが数多くあります。今回の手順は、こうした物質群の複雑な高圧構造に広く適用できる汎用的な解析法です。
◆研究者からひとこと
| 高圧実験は制限が多く、原子の並びを実験で決めることが難しい場合があります。今回は、放射光実験で候補を絞り、計算で構造を整え、もう一度実験に戻って確かめることで、目に見えない結合のパターンを突き止めました。この方法を、他の高圧物質の研究にも広げたいと考えています。 | ![]() 片山教授 |
■論文情報
Crystallographic origin of pressure-induced bond order in the frustrated spinel CuIr2S4
掲 載 誌:Communications Chemistry
著 者:Masatoshi Emi, Tsubasa Ohashi, Keita Kojima, Koudai Sugimoto, Kazuyuki Matsubayashi, Kenta Oka, Hirokazu Kadobayashi, Saori Kawaguchi-Imada, Daigo Ito, Taisei Kubo, Kenta Hashimoto, Hitoshi Kawaji, Hiroyuki S. Suzuki, Shoichi Nagata, and Naoyuki Katayama
D O I:10.1038/s42004-026-02240-y
U R L:https://doi.org/10.1038/s42004-026-02240-y
■研究体制
本研究は、岡山大学、名古屋大学、東京大学、慶應義塾大学、北里大学、電気通信大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)、京都大学、東京科学大学、室蘭工業大学の研究者による共同研究です。筆頭著者の江見方敏(名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程)は、研究指導委託学生として岡山大学で本研究を進めました。放射光X線回折実験はSPring-8 BL10XUで行いました。
■研究資金
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(JP20H02604、JP21K18599、JP22KJ1521、JP23H04104、JP23K03286、JP24H01620、JP24K01329、JP26H00599、JP26H00590、JP26K17087)、科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT、JPMJPF2221)、東京科学大学フロンティア材料研究所共同利用研究、東京大学物性研究所共同利用、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM、JPMXP1225UE0024)等の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
70年前に提唱されたAnderson条件に整合するボンド秩序を高圧下で発見
<お問い合わせ>
【研究内容に関するお問い合わせ】
岡山大学 学術研究院環境生命自然科学学域
教授 片山尚幸
(電話番号)086-251-7807
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岡山大学 総務部広報課
(電話番号)086-251-7292
学校法人北里研究所 広報室
(電話番号)03-5791-6422
電気通信大学 広報係
(電話番号)042-443-5019
