ショウジョウバエの脳に隠された“体内時計”の秘密:240個の時計細胞と神経ネットワークが明らかに
2024年12月19日
◆発表のポイント
- ショウジョウバエの脳における体内時計を構成する神経細胞(時計細胞)の数が約240個であることが明らかになりました。これにより、体内時計の位置の理解が進みました。
- 時計細胞がシナプス結合を通じて他の神経細胞とどのように連携しているかがほぼ完全に解明されました。
- この研究により、どの時計細胞がどの神経細胞に接続し、体内時計を制御しているのかが具体的にわかるようになりました。
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)の吉井大志教授(時間生物学)、岡山大学大学院自然科学研究科の福田あゆみ大学院生らは、ドイツ・ヴュルツブルク大学とアメリカ・ネバダ大学リノ校との国際共同研究によって、キイロショウジョウバエの脳にある時計細胞(神経細胞)の全シナプス結合を明らかにしました。
これらの研究成果は12月5日付けの英国科学誌「Nature Communications」に掲載されました。
約24時間のリズムを生みだす体内時計の中枢(時計細胞)は、脳に存在することがヒトを含む多くの動物で明らかにされていますが、その神経回路はよく分かっていません。本研究では、神経細胞数の少ないキイロショウジョウバエを用いることで、神経連絡で重要なシナプス結合を指標に、時計細胞の神経回路をほぼすべて明らかにできました。これは、体内時計の神経科学において大きなマイルストーンにたどり着いたことを意味します。
本研究成果を応用することで、より複雑な脳を持つ動物での研究が進むと期待されます。
図1.キイロショウジョウバエの脳と時計細胞の神経回路 (Image credit: Nils Reinhard)
◆研究者からひとこと
脳で約24時間のリズムがどのように生み出されるのか、その時間情報はどこに運ばれるのか。それを明らかにするための配線図がキイロショウジョウバエででき上がりました。路線検索のように、時計細胞のつながりを調べる時代が来るとは驚きです。体内時計の新しい時代の幕開けに関われたことは誇りです。 | 吉井教授 |
■論文情報
論 文 名:Synaptic connectome of the Drosophila circadian clock
掲 載 紙:Nature Communications
著 者:Nils Reinhard, 福田あゆみ, Giulia Manoli, Emilia Derksen, 齋藤愛加, Gabriel Möller, 関口 学, Dirk Rieger, Charlotte Helfrich-Förster, 吉井大志, Meet Zandawala
D O I:https://doi.org/10.1038/s41467-024-54694-0
U R L:https://www.nature.com/articles/s41467-024-54694-0
■研究資金
本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤B・19H03265, 研究代表:吉井大志)の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
ショウジョウバエの脳に隠された“体内時計”の秘密:240個の時計細胞と神経ネットワークが明らかに
<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院環境生命自然科学学域
教授 吉井 大志
(電話番号)086-251-7870