岡山大学 理学部

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素早い体色変化を「威嚇の表情」として使うメダカ〜カモフラージュ機能をコミュニケーションへ転用か?〜

2024年07月26日

国立大学法人東北大学
国立大学法人岡山大学


◆発表のポイント

  • セレベスメダカを背景が暗い環境で集団飼育すると、一部の個体の尾ビレで黒色模様が確認されました。黒色模様を持つオスは攻撃性が高く、黒色模様を持たないオスやメスから攻撃されにくくなりました。
  • 背景が明るい環境下では黒色模様を持つオスが消失し、集団内での攻撃行動も生じないことから、セレベスメダカは環境に応じて黒色模様を威嚇シグナルとして用いることが判明しました。
  • 将来的に、体色変化を介した背景へのカモフラージュ能力がコミュニケーション手段として進化したプロセスの解明が期待されます。

 カメレオンやタコなどの動物種の中には体色を変化させて背景環境にカモフラージュする能力を持つだけでなく、この体色変化を求愛や威嚇などのコミュニケーションに用いている種がいます。このコミュニケーション手段としての体色変化は、背景へのカモフラージュとして機能していた体色変化が進化の過程で「転用」されたものだと考えられています。しかしながら、この進化プロセスを研究するための適切な実験モデルは限られていました。
 東北大学大学院生命科学研究科の上田龍太郎氏(博士前期課程学生)と竹内秀明教授、岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理学部附属臨海実験所)の安齋賢教授の研究グループは、メダカの一種、セレベスメダカの体色変化が、環境に応じてカモフラージュとコミュニケーション手段の二つの機能を果たすことを明らかにしました。また、セレベスメダカにおいてはカモフラージュの体色変化がコミュニケーション手段として「転用」されたことが示唆されました。
 本研究成果は2024年7月24日に学術誌Biology Lettersに掲載されました。


図1. セレベスメダカのメス(上)とオス(下)


図2. 背景環境の変化による体色変化と集団飼育条件下における体色変化


図3. 水槽壁面が藻で覆われた背景が暗い環境と水槽が透明で背景が明るい環境における体色と攻撃行動の関係 暗い背景条件では、黒色模様を持つオスは、黒色模様を持たないオスやメスと比較してより頻繁に攻撃を行い、黒色模様を持たないオスやメスからほとんど攻撃を受けなかった。一方で、明るい背景条件では、黒色模様を持つオスと攻撃行動の両方が一度も観察されなかった。つまり、背景が暗い環境下では、黒色模様は他のメダカに対して威嚇の意味を持つシグナルとして働くが、背景が明るい環境下では、体色の変化はカモフラージュに優先的に用いられ、威嚇シグナルとして機能できなくなったのではないかと考えられる。

【謝辞】
本研究は科学研究費助成事業(JP21H04773, JP21K15143, JP22H05483, JP23H02513 , JP24H01216)、基礎生物学研究所共同利用研究 (22NIBB101, 23NIBB102, 23NIBB421, 24NIBB404)、公益財団法人 三菱財団 自然科学研究助成、公益財団法人 武田科学振興財団 生命科学研究助成の助成を受けて行われました。

■論文情報
タイトル:Rapid body colouration changes in Oryzias celebensis as a social signal influenced by environmental background
著者: Ryutaro Ueda, Satoshi Ansai*, Hideaki Takeuchi*
筆頭著者情報:東北大学大学院生命科学研究科 脳生命統御科学専攻 博士前期課程 上田 龍太郎
*責任著者:岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域 (理学部附属臨海実験所) 教授 安齋 賢
東北大学 大学院生命科学研究科 脳生命統御科学専攻 教授 竹内 秀明
掲載誌:Biology Letters
DOI:https://doi.org/10.1098/rsbl.2024.0159
URL:https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2024.0159

<詳しい研究内容について>
素早い体色変化を「威嚇の表情」として使うメダカ〜カモフラージュ機能をコミュニケーションへ転用か?〜


【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 竹内 秀明
TEL: 022-217-6218

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193

岡山大学総務・企画部広報課
TEL: 086-251-7292

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