岡山大学 理学部

UNIV. TOP
LANGUAGE
ENGLISH
MENU

オーディン古細菌からチューブリンタンパク質を発見~真核生物の微小管の進化を解き明かす~

2022年5月31日

東京工業大学
岡山大学
名古屋大学


◆ポイント

  • アスガルド上門に属するオーディン古細菌から、真核生物の微小管を形成するチューブリンタンパク質によく似た「オーディンチューブリン」を発見
  • オーディンチューブリンの構造解析により、GTP加水分解の詳細なメカニズムを初めて解明
  • 重合したオーディンチューブリンが、真核生物の微小管よりも原核生物のFtsZの構造に類似したリング構造を形成することを確認

 東京工業大学 地球生命研究所(ELSI)のカネール・アキール(Caner Akıl)研究員(研究当時。現オックスフォード大学)と藤島皓介准教授、岡山大学 異分野基礎科学研究所のサムソン・アリ(Samson Ali)助教、リン・トラン(Linh T. Tran)研究員、ロバート・ロビンソン(Robert C. Robinson)教授および名古屋大学 大学院理学研究科の成田哲博准教授らの合同研究チームは、アスガルド上門オーディン古細菌由来のチューブリンタンパク質を発見し、そのGTP結合状態の立体構造や束状の特徴的なリング構造を明らかにした。
 イエローストーン国立公園の温泉に生息する好熱性のオーディン古細菌は原核生物ではあるが真核生物に近縁とされており、真核生物特有の細胞骨格の起源と進化の解明に重要なモデル微生物の一種である。今回の研究ではこのオーディン古細菌から、微小管を形成するチューブリンタンパク質と進化的に近いタンパク質「オーディンチューブリン」が見つかった。X線結晶構造解析と電子顕微鏡観察によって、微小管と同様に、GTPがサブユニット間に結合し、加水分解により構造変化が誘発される詳細なメカニズムを明らかにした。さらにクライオ電子顕微鏡による観察で、重合したオーディンチューブリンのフィラメントは直径100 nm程度のリング構造を形成することがわかった。この構造は、微小管の直径25 nm程度の直線的構造よりも、原核生物のFtsZタンパク質のリング構造と類似している。このことからオーディンチューブリンは進化的に、原核生物のFtsZと、真核生物の微小管を形成するチューブリンの中間に位置する可能性が示唆された。
 本研究成果は3月25日に国際学術誌「Science Advances」に掲載された。


図1. オーディンチューブリンタンパク質のスケールサイズ別の構造 (Credit: カネール・アキール、藤島皓介、ロバート・ロビンソン/ C. Akıl et al. Sci. Adv.2022より改変)



図2. オーディンチューブリンと真核生物の細胞分裂に関わる微小管の重合反応の比較 (Credit: ロバート・ロビンソン/ C. Akıl et al. Sci. Adv.2022より改変)


■論文情報
論文名:Structure and dynamics of Odinarchaeota tubulin and the implications for eukaryotic microtubule evolution
掲 載 紙:Science Advances
著 者:Caner Akıl, Samson Ali, Linh T. Tran, Jérémie Gaillard, Wenfei Li, Kenichi Hayashida, Mika Hirose, Takayuki Kato, Atsunori Oshima, Kosuke Fujishima, Laurent Blanchoin, Akihiro Narita, Robert C. Robinson
DOI:10.1126/sciadv.abm2225


<詳しい研究内容について>
オーディン古細菌からチューブリンタンパク質を発見~真核生物の微小管の進化を解き明かす~


<お問い合わせ>
東京工業大学 地球生命研究所(ELSI)
准教授 藤島皓介(ふじしま こうすけ)
TEL: 03-5734-3414
 
【取材申し込み先】
東京工業大学 総務部 広報課
TEL: 03-5734-2975
FAX: 03-5734-3661

岡山大学 総務・企画部 広報課
TEL: 086-251-7292
FAX: 086-251-7294

名古屋大学 広報室
TEL: 052-789-3058
FAX: 052-789-2019

年度