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実施報告

先端科学実習 [ 地層から当時の環境を読み解く ]

担当者 鈴木 茂之 教授(地球科学科)
日時・期間 講義:平成25年10月2日(水)16:15 〜 17:45
実習:平成25年10月19日(土)10:00 〜 17:00
場所 理学部本館1F 地球科学実験室,高梁市有漢町有漢インター周辺

目的

自然科学には自然そのものを観察する分野がある。この実習では野外で直接自分の観察で得たことから,地層が形成された当時の環境を復元する作業を体験する。

報告事項

観察の対象としたのは中新世(およそ1500万年前)の地層で,地球規模の海進期に吉備高原面にまで海面が達した際に,海に堆積したものである。地層の観察と共に,室内でも観察できるよう地層の剥ぎ取り標本の作製を試みた。

地層の露出している部分から重要な個所を選び,表土を取り除くなどして露頭を清掃した。

その部分に布を置き,接着剤を塗って乾くのを待った。

その間,地層の観察とスケッチを行った。観察はそれぞれの地層の構成物,構成する砕屑物の淘汰度,堆積構造,生物擾乱の痕,化石などに着目して行った。全般に淘汰の悪い泥混じり砂で,巣穴の痕が行き渡り,貝化石を含む。化石は合弁のカキがあるほか,アカガイ,ウミニナなど潮間帯のものが破片で含まれていた。地層形成場が干潟に近い浅海ではないかと議論した。また挟まれる礫岩層の成因について考察した。連続性が2〜3m程度しかない下に凸のレンズと,連続性が良く周囲よりやや淘汰が良い平行的な層がある。豪雨性,外浜侵食,海水準変動など考えられる影響を出して,その礫岩層が堆積したイベントについて議論した。

化石を掘り出すなどして,時間をかけて地層観察を行った。しだいに周辺の子供たちが集まり臨時の化石観察公開講座になった。学生達も子供たちに化石や地層などについての説明に活躍した。ここから化石が出ることを地元では知られておらず,ささやかな地域貢献になったようである。

張った標本用の布をはがしたが,接着剤の固化が十分おこらなかったためか,地層が堅すぎたためか,全体の半分以下しか試料がとれず,結果的には剥ぎ取り標本は失敗であった。

しかし主目的である地層観察に関しては,参加者の積極的な議論によって検討を深めることが出来,野外調査の経験になったようである。

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